登校渋りのAさんは被虐待児です。
学校としてはスクールソーシャルワーカー(以下SSW)と関係性を築いてほしいという願いがあり、私もそのつもりで何回か会いました。
Aさんは自分からいろいろな話をしてくれました。
家庭の話や、学校の話、今はまっていることについて、死生観など、
幅広くいろいろな話をしてくれていましたので、
私はてっきりそれなりに関係が築けたと思っていました。
しかし、ある時気づいたのです。
毎回Aさんにとって私は「初めまして」だったようなのです。
ある時、私が学校に到着してすぐ、廊下で先生とAさんに会いました。先生は、
「Aさん、よかったね、ヒロさん来てくれたよ。」
とAさんに声をかけました。しかし、Aさんは無反応。さらに先生は、
「あれ?ヒロさんと何回か話してるよね?」
と質問しましたが、Aさんは怪訝そうな表情で首を横に傾けたのでした。
私はこのことから、Aさんが虐待で受けた心の傷は深いのかもしれない、と思いました。
小児精神科医の友田明美医師の著書『子どもの脳を傷つける親たち』によると、
前頭前野は学びや「記憶」を司っていますので、私の事が記憶に残らないのだと考えました。
Aさんの記憶に関するエピソードを先生にお伺いすると、なんで覚えてないんだろ?と思うことが何度かあったとのことでした。
管理職に、心的外傷による記憶力低下の可能性をお伝えさせていただきました。
すると、「そんあことあるの?!」とかなり驚かれていました。
そして、まだ納得していただけていないように感じています。
友田明美医師の著書『子どもの脳を傷つける親たち』は平成29年に出版されています。
ですので、虐待を含む不適切な養育により脳が変形してしまうことは、まだ広く一般に知られていない事実なのだと思います。
子どもに関する新しい情報をいち早くつかみ、教育現場にお届けするのもSSWの大切な仕事の一つだと思っています。