スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

無意識の行動を意識化させる

 

下校時の様子を観察

子どもたちの下校時間まで勤務した日は必ず下校の様子を観察します。

たまに、帰るのを渋ってだらだらとその場にいる子もいます。

稀ではありますが、「帰りたくない。」と深刻な雰囲気を醸し出す子もいます。

そういった子がいないかな?ということを気にしてみています。

 

その日も下校時間に子どもたちの様子を観察していました。

私と共に、いつもずっといてくださるA先生がいます。

A先生は生徒指導主任で級外となっています。

以前、級外の先生で担任がないって寂しい、といった言葉を聞いたことを思い出し、

A先生はいかがですか?と伺ったら、

「去年は担任だったから最初はさみしく感じたけど、

 今は学校の子全部の担任って感じでいいよ。」

と答えていただき、子どもたちは幸せだなぁ、と感じました。

「忘れ物するなよ」はもったいない

A先生のことでちょっと気になっていたことがありました。

下校する子どもたちに「忘れ物するなよ~!」と声をかけるのです。

この言葉がけ、もったいないなぁと思っていました。

子どもたちは忘れ物と言われてもピンとこないと思うのです。

ましてや特性のあるお子さんはなおさらです。

私としては、「上履き持って~!」など

具体的に何を持って帰ってほしいのかを言ってもらいたいな、と思っていたのです。

すると、その日の声掛けは

「上履き忘れるなよ~!」「傘忘れるなよ~!」だったのです。

私は嬉しくなってこの喜びをA先生に伝えたいと思いました。

そして、どう伝えるとA先生に喜んでもらえるか、ちょっと考えることにしました。

同じ研修を受けたことが役立つ

そして思い出したのが先日A先生と共に受けた研修(注1)です。

「A先生、言葉のかけ方変えてくださったんですね、

 特性のあるお子さんには具体的に伝えた方が分かりやすいですものね、

 先日の研修が生きていますね、あの研修良かったですものね。」

と伝えさせていただきました。

A先生は少し顔を赤らめて、

「いや~、気づきませんでした、無意識でしたよ、

 でも、そうですよね、具体的な方がわかりやすいですよね。」

と答えてくださいました。

実は、きっとA先生は無意識だろうな、と推察していました。

でも、あえて意識的にやっているのですね、

という風にお伝えさせていただきました。

そうすることでA先生の受け入れも良いのではと思ったからです。

無意識の行動を意識化させる

無意識の良い行動を意識化させることでその良い行動を強化する、

この考え方は特別支援の考え方だと思います。

それを学校教育全体にも広めていってもらえたらありがたい、

そのためには、先生方にこれっていいな、を体験していただきたい、

そういった思いでA先生に声掛けをさせていただきました。

A先生は無意識に言葉がけが変わったとおっしゃったけれど、

やはり、研修の影響はあると思っています。

研修を受けたからこそ、過去のいろいろな知識が無意識に統合され、

あの言葉がけになったのだと思っています。

A先生の本来持っていた力が発揮された場面に出くわすことができた、

それを継続してもらうために意識化を試みた、といったところです。

これは、広い意味でエンパワメントしていることになると思っています。

 

注1 『子ども理解と支援に向けた発達障害の特性と対応』の研修