スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

教育委員会からの指導

スクールソーシャルワーカー(以下SSW)の仕事を始めて1年半経ちました。

この仕事では感謝の言葉を伝えていただけることが多く、

精神的に脆弱な私にとってありがたい環境だと思っています。

しかし、ここにきて、

自分としては問題ないと思い発言したことに教育委員会の指導が入り、

けっこう落ち込みました。

 

私の扱うケースのお子さんAさんは今登校できていない状態です。

Aさんは担任に苦手意識があるようで、

Aさんの保護者さんは担任と学年主任に不信感があるようでした。

保護者さんは面談の中で、

来年度同じ担任と学年主任にしてほしくない、

それを先生方には言いにくいとおっしゃっていました。

また、保護者さんは自分たちは弱い立場であることもおっしゃっていました。

社会福祉士は、弱者のアドボケイトも大事な仕事の一つですので、

保護者さんに私から伝えた方が良いかを尋ねてみました。

すると、お願いしたいということで、管理職に伝えさせていただきました。

そのとき、「やっぱり(保護者の要望通りは)難しいですか?」と質問しました。

また、面談が行われる以前にも、上記と同じような内容の質問をしてしまったことがありました。

私はこの件で非常に困っていたので教育委員会の職員に相談に行ったのです。

そして、この人事に口を出す行為を「越権行為」になりかねない、と指導を受けたのでした。

 

私はSSWとして、100%子どもとそのご家庭の味方でありたいと思っています。

担任が替わらないと来年度も来られないんじゃないかと心配に思ってしまったのです。

しかし、指導を受けて考え直しました。

その子が、担任を替えてくれないと学校へ行けない、

という言葉を発したのを誰も聞いていません。

大人の勝手な思い込みなのかもしれない、と。

来年度の心配をするよりも、『今できることは何なのかを考える』、

大事な視点が抜けていたと気付きました。

そして、NLPで学んだ「失敗はない、フィードバックがあるだけ」の言葉が浮かびました。

とはいえ、自分一人ではできることは限られます。

近々行われるケース会議で、私を含む教職員一人一人ができることを見つけ、協働してやっていきたいと思いました。

 

 

 

 

 

さりげなく繋がる

スクールカウンセラー(以下SC)は相談意欲を既に持った方を対象としますが、

スクールソーシャルワーカー(以下SSW)は相談意欲がない方たちと、ある意味介入的につながっていくこともしています。

 

例えば、お子さんが登校を渋っているがお母さんに相談意欲がない場合、

SSWはお母さんがお子さんを送ってくる時間に合わせ、

さりげなく下駄箱付近にいるようにします。

さりげなく話しかけ、なんとなく立ち話にもっていき、なにげなく近況を聴くことで、

お母さんのストレスの軽減、また、情報を収集をするのです。

 

特に子どもの場合、自分から相談したい、とはなりにくいものです。

また、既にSCと何度か面談するものの、

SCの勤務回数が少ないため状況の好転が遅々として進まないこともあります。

そんなときも、SSWは自然にお子さんに近づき、

そのお子さんを観察させてもらったり、思いを聴いたり、

時間を共に過ごすことで信頼関係を築いていったりもします。

そして、SSWは臨機応変に動けることを強みに、

そのお子さんに合わせて来校したり、家庭訪問をしたりということもしています。

 

過日、今までほとんど依頼を受けていなかった学校から、

まずはケース会議に出席してほしいというご依頼がありました。

このお子さんは、

「登校が安定しないこと、希死念慮があったことが心配」

とのこと。

すでに、お子さんも両親もそれぞれSCとは面談しているけれど、SSWの力も借りたい、

とのことでした。私は、

「SSWはお子さんの話を聴くことができること」

「場合によっては家庭訪問ができること」

「学校の要望で来校できること」

を伝えさせていただきました。

学校は、さっそく来校の依頼をしてくださいました。

そして初日、SSWが到着する数分前に欠席連絡が入ったとのこと、

この日、給食を頼んでおいたので、給食を食べて帰りました。

こういった「不発」もあります。

先生方は申し訳なさそうにしていましたが、

私はSSWとしてそういったこともあるのが当たり前と思っています。

2回目の来校日、いつもなら登校する時間にその子は来ず、

来ないかもな~っていう雰囲気になっていたところ、

ひょこっと保健室にやってきました。

背中は丸まり、目はうつろ、よくこんな状態で登校してきたと思い、

心の中で労っていました。

なぜ言葉にしなかったのか、

そういったことを言われるのが苦手なお子さんもいるからです。

そのお子さんがどんなお子さんかを私はまだわかっていませんので、

まずは積極的な声掛けはせず観察させてもらっていました。

そして、保健室の先生がその子さんに私を紹介してくださり、

6限は私とその子の二人でその学年の合同授業を見学していました。

体育館の片隅で、その子はいろんなことを話してくれました。

哲学的な話から、自分の過去、最近もらってうれしかったものなど、

幅広く話してくれました。

聴いた内容の一部を先生方に伝えると、そんなことまで話したのかと驚いていました。

私はSSWとして、どんなお子さんんの話も聴ける人でありたい、と意識しています。

専門職として技を駆使して話を聴いているのです。

しかし、それを分かってくれる教職員はほとんどいないと思います。

「やっぱり女の人には話しやすいのかね~。」

なんて言われ、がっくりとし、心折れたこともあります。

最近は私もたくましくなり、教職員がわからないのは当然、と切り替えています。

それより、「そんなことまでその子は話したんだね。」の言葉をありがたく受け取り、

そのお子さんのウェルビーイングを高めていきたい、そんな思いでいます。

 

 

担任を労う

「違うでしょ~!!」

運動場から怒鳴るような大声が聞こえます。

校内巡視中であった私はすぐに運動場へ向かいました。

 

今年度、年度当初から気になっているこのクラスは、

発達に偏りのあるお子さんの割合が高く、

担任の先生は大きな声で指導することが多いように感じていました。

そして、そのことを管理職もそれを把握しており、

スクールソーシャルワーカー(以下SSW)に気にして見てほしいと頼んでくれていました。

 

この日は、リレーを練習していました。

リレーは、実は低学年にはなかなか難しい競技です。

なぜなら、バトンを落とさず受け取ること、

その受け取るときの体の使い方を認識し行動に移せること、

もらったら全速力で走ること、

コース(直線やカーブ)に沿って走ること、

バトンを落とさず持ち続けること、

自分がどこまで走るのかを認識していること、

バトンを渡すときに減速すること、

バトンを渡す人を見つけること、

次の走者の手の上にしっかりのせて渡すこと、

と、思いのほかマルチタスクな側面があり、

健常のお子さんでも初めはとまどうと思うのです。

これだけでも大変なのに、担任の先生はもう一つやることを増やしました。

4チームのうち下位二チームは、トラックの内側の直線を走ること、にしたのです。

無我夢中で走る子どもが自分が何位か把握するのも難しいと思うんです。

運動会の時も、順位は体育委員会の人が教えてくれるシステムになっています。

間違えるたび、「違うでしょ~!!」と大声になっていた、ということでした。

 

SSWの私は、この環境は子どもたちにとってマイナスであり改善したいと考えます。

さて、SSWがこのクラスの子どもたちにできること、

これを読んでくださっているみなさんはどのように考えるでしょうか?

私がとった行動、それは、『担任を労う』です。

授業後すぐ担任に駆け寄り声をかけます。

「○○せんせ~い!大きな声出さなくてはならなくて大変でしたね~。」と。

こう声をかけることで、先生はこの時間のご自分を振り返ってくださいます。

「いや~、あの子たちには難しかったみたいですね~。つい大声出しちゃいました。いけませんよね~。」と。そして私は、

「そうですよね~、支持が通りにくいお子さんが多いクラスですものね~、ご苦労お察しします。」と返します。

先生方は優秀です。

こちらが振り返る機会をあえて作ることで、ご自分を振り返ってくださいます。

こうやって、SSWは教員をエンパワメントしています。

 

1週間後、そのクラスのリレーの練習を見ることができました。

今回、担任の大声は必要最低限の指示と、誉め言葉だけでした。

担任を労うことで子ども達にとって居心地の良い教育環境を整えること、

そいったことも、SSWの大切な仕事だと思っています。