スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

担任を労う

「違うでしょ~!!」

運動場から怒鳴るような大声が聞こえます。

校内巡視中であった私はすぐに運動場へ向かいました。

 

今年度、年度当初から気になっているこのクラスは、

発達に偏りのあるお子さんの割合が高く、

担任の先生は大きな声で指導することが多いように感じていました。

そして、そのことを管理職もそれを把握しており、

スクールソーシャルワーカー(以下SSW)に気にして見てほしいと頼んでくれていました。

 

この日は、リレーを練習していました。

リレーは、実は低学年にはなかなか難しい競技です。

なぜなら、バトンを落とさず受け取ること、

その受け取るときの体の使い方を認識し行動に移せること、

もらったら全速力で走ること、

コース(直線やカーブ)に沿って走ること、

バトンを落とさず持ち続けること、

自分がどこまで走るのかを認識していること、

バトンを渡すときに減速すること、

バトンを渡す人を見つけること、

次の走者の手の上にしっかりのせて渡すこと、

と、思いのほかマルチタスクな側面があり、

健常のお子さんでも初めはとまどうと思うのです。

これだけでも大変なのに、担任の先生はもう一つやることを増やしました。

4チームのうち下位二チームは、トラックの内側の直線を走ること、にしたのです。

無我夢中で走る子どもが自分が何位か把握するのも難しいと思うんです。

運動会の時も、順位は体育委員会の人が教えてくれるシステムになっています。

間違えるたび、「違うでしょ~!!」と大声になっていた、ということでした。

 

SSWの私は、この環境は子どもたちにとってマイナスであり改善したいと考えます。

さて、SSWがこのクラスの子どもたちにできること、

これを読んでくださっているみなさんはどのように考えるでしょうか?

私がとった行動、それは、『担任を労う』です。

授業後すぐ担任に駆け寄り声をかけます。

「○○せんせ~い!大きな声出さなくてはならなくて大変でしたね~。」と。

こう声をかけることで、先生はこの時間のご自分を振り返ってくださいます。

「いや~、あの子たちには難しかったみたいですね~。つい大声出しちゃいました。いけませんよね~。」と。そして私は、

「そうですよね~、支持が通りにくいお子さんが多いクラスですものね~、ご苦労お察しします。」と返します。

先生方は優秀です。

こちらが振り返る機会をあえて作ることで、ご自分を振り返ってくださいます。

こうやって、SSWは教員をエンパワメントしています。

 

1週間後、そのクラスのリレーの練習を見ることができました。

今回、担任の大声は必要最低限の指示と、誉め言葉だけでした。

担任を労うことで子ども達にとって居心地の良い教育環境を整えること、

そいったことも、SSWの大切な仕事だと思っています。