スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

「将来自立したいです」

 

 

不登校だったAさん

「将来自立したいです。親の世話にはならないように。」

そう面談で話してくれたAさんは、2年前には全くの不登校でした。

当時、私との面談の時だけ登校、欠席連絡すら入れない日々でした。

登校が不安定になってから、欠席連絡をAさん自身がしていました。

それは親の意向です。

医師が「Aさんのプレッシャーになることはさせないように」と言ってくれたので、Aさんは欠席連絡をしなくてよくなったのです。

欠席連絡は、義務教育の場合本来は保護者がするものだと思いますが、Aさんの保護者さんは自分たちの方針としてAさんに連絡させていたのでした。

学校はAさんの保護者さんの考えも汲んでくださり、欠席連絡はなしで合意してくれたのでした。

普通に登校しだしたAさん

そんなAさんですが、昨年度春、嘘のように普通に登校できました。

Aさん自身も理由はわからないし、周りも当然検討はつかない、ただただ驚きと喜びがありました。

ただ、一昨年前の11月ごろから登校が不安定になっていたので、昨年11月ごろ周りの大人たちはどきどきしていたのでした。

そして昨年は、遅刻は増えたものの一昨年前のように欠席が続くことはありませんでした。

Aさんとの定期面談

Aさんとは月に1回程度面談をしています。

昨年度の春、もう大丈夫だと思うから面談をやめることもできることを伝えましたが、Aさんの希望で続けています。

面談が始まったころは言葉も少なく、面談の半分はAさんが好きなことをして過ごしていました。

始めはAさんの一人遊びを私が見守る形、だんだん一緒に遊ぶようになりました。

そして気が付くと面談の時間のほとんどを対話で過ごすようになりました。

子どもをまともな大人に出会わせる

Aさんの保護者さんは、欠席連絡を本人にさせることからわかるように、子育てが上手とは言えない保護者さんと言えます。

そういった保護者さんに親として変わってもらうことはかなり難しいです。

親の変化を促している間にお子さんはどんどん成長してしまいますから間に合わなくなります。

ですから、親の変化を促しつつも、今時点でAさんにとって良いかかわりをしてくださる人たちから良い影響を得られるようつないでいくことが大切だと思います。

Aさんは今では、学校の先生だけでなく、通級の先生や放課後デイのスタッフ、信頼できる医療機関とも良い関係ができています。

学校はまともな大人に出会えるチャンスがある

私は、大切なのは、Aさんが自立すること、これに尽きると思っています。

まともな大人たちに出会う中で自分が理想とする大人に出会い、親を客観視できるくらいになってもらえたらと思っています。

朝日新聞デジタルマガジン&w」の記事で、ヤングケアラーだった女性が親と縁を切る記事を読みました。

その中に「学校は楽しかった」という一言を見つけました。

私はこの女性が親と縁を切る決断ができたのは、学校でまともな大人たちに出会うことができたことも大きいと思っています。

また、アルコール依存症を親に持つ方お二人のインタビューを聞いたのですが、お一人はご自身も同じ病になり、もう一方の方はならなかった、とおっしゃっていました。

そして、ならなかった方は、学校に居場所があった、学校が楽しかった、とおっしゃっていたことが印象に残っています。

病んでしまった方も、学校に居場所があったならば違った結果になっていたかもしれない、と私は思っています。

学校は、すべてのお子さんが親以外のまともな大人に出会えるチャンスがある場所です。

不適切な養育環境にあるお子さんが一人でも多く、自ら親からの負の世代間連鎖を断ち切れるようになってほしいと思っています。

今後もスクールソーシャルワーカーとしてお子さんたちとつながり、まともな大人たちにつなげていきたいと思っています。