スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

負の連鎖を断ち切る

 

 

負の連鎖を断ち切る

「負の連鎖を断ち切る」ことは、私がスクールソーシャルワーカー(以下SSW)として大事にしていることの一つです。

虐待や貧困などの負の連鎖を断ち切ることで、子どもは親とは違った人生を歩むことができます。

それが、子どものウェルビーイングを高めることになると思うのです。

では、どうすれば断ち切れるのか、それは、学校教育を受けることも大きな一つだと思っています。

虐待する親の元に生まれたことや貧困家庭に生まれたことは変えられない、でも、未来はいくらでも変えることができます。本人次第なのです。

では、子どもをその気にさせる、エンパワメントするにはどうするか、子どもが親以外のまともな大人たちに出会い、自分の親を客観視できるようになること、親以外の大人のモデルを見つけることだと思うのです。

そういった場の第一歩が学校教育の場だと思うのです。

学校には「先生」という優秀な大人がたくさんいます。

いろいろな先生に出会い、いろいろな先生たちから学ぶことで新たな価値観を得ることができると思うのです。

当事者だった私

私は幼児期に母親からの身体的虐待を受けていました。学童期は兄弟間差別という心理的虐待を受けていました。

子どもは知識がありませんから、育つ家庭が当たり前の家庭ということになります。

自分が虐待されて育ったと気づいたのは自分が親になったころだと思います。

なので、小学生の低学年くらいまでは親に認められようとしていました。

しかし、高学年くらいから反発心を持つようになり、親のようにはならない、と、親を反面教師にして生きて今に至ります。

また、私が中学生のころに父親が会社を辞めてしまったところから貧困家庭となってしまいました。

お金がなかったので親の希望する歩いて行ける高校に進学しました。

また、その先の進学費用は出せないと言われ、受験料を親戚に借り、合格した短大の入学金等は祖母に借りました。

それらの費用は、学生時代のバイト代ですぐに返しました。

入学後の学費等はバイト代と奨学金で賄いました。

2年になると教育実習でバイトできなくなる時期があるので、1年生の時に無理して三つバイトを掛け持ちし、体を壊したことがありました。

奨学金は短大卒業後に働いたお金を貯め数年で全額返還しました。

親が借金で苦しむ姿を見ていたのですぐに返したかったのです。

私がまともな大人になれたのは

両親との比較で言えば、私はずいぶんまともな大人になれた自信があります。

新しい家族を持ち、100点満点の子育てができたとは言えないですが、優しい子どもたちに育ち、お金に困ることもありません。

そしてそれは、学校教育のおかげだと思っています。

私に一番影響を与えた先生は小5の担任のA先生でした。

研究授業の打ち上げとして学級全員分のケーキを作ってくれたこと、

それをマル秘事項として学級会でこっそり食べたこと、

障がい者についての絵本を読み聞かせしてくれたこと、

鉄棒の逆上がりができるようになるまで練習させられたこと、

できるようになってほめてもらえたこと、

学級委員のなったときのいろいろな立案に何度もだめだしされたこと、

先生の自宅へ遊びに行かせてもらったこと、

先生の転任校へおしかけても温かく迎え入れてくれたこと、

そして喫茶店へ連れて行ってくれたこと、

ユーモア、優しさ、厳しさ、包容力、いろいろ兼ね備えた先生でした。

そんなA先生のような先生になりたい!と、私は教師を目指すことを決めたのでした。

貧困家庭になり、一度はそれをあきらめかけたのが高校の時です。

でも、教師になる夢に向かう力を支えてくれたのは高校の先生たちでした。

塾に行くお金がないので数学や英語を個人的に見てくれていました。

また、廊下ですれ違う先生たちがテストの結果をほめてくれたり喜んでくれたりしたのでした。

数学で学年トップになったときに「でかした!」と言ってほめてくれた高3の時の担任の喜びは今も鮮明に思い出せます。

受験間近のころ、学年主任がこっそり私にお守りをくれたことも忘れられません。

学年主任が担任も兼務していて、学年主任曰く、自分のクラスの生徒と私の分のお守りを受けてきてくれたとのことでした。

その先生が担任になったことは一度もなかったのでなぜ私を特別扱いしてくれたのかはいまだわからないままです。

でも、そんな特別扱いが、苦しい背景を持つ自分にとって大きな力になったのは言うまでもありません。

学校教育は、虐待や貧困など、負の連鎖を断ち切る力をつけられることは、こういった自分の経験で理解しています。

SSWとして一人でも多くの子どものウェルビーイングが高まるよう先生たちと連携し、支援したいです。