登校を渋るBさん
その日、A校にいつもより早い時間から勤務しました。
それは、Bさんの登校状況を観察したかったからです。
Bさんは登校時間が皆より遅く、しかもなかなか教室に入ることができない状態でした。
Bさんのこの状況は実は今に始まったことではなく、数年前にもあったのでした。
その時はほぼ保健室で過ごし、そのあと教室に入れる日もあれば入れない日もありました。
それで良しとしてくれている学校体制をスクールソーシャルワーカーの立場としてはとてもありがたく思っていました。
登校渋りの背景
Bさんに顕著な登校渋りは見られなくなった時期もあったせいか、今回登校を渋るBさんに、先生たちは頑張らせようとする声掛けをしていました。
頑張らせる声掛け、それは、教育的立場からは当たり前のことで正当です。
でも、Bさんは以前に登校を渋ったことがあり、その後もすっきり登校できていたわけではありません。
その背景として心理的虐待があったことが影響していると、以前の登校を渋った時期は校内で共通理解ができていました。
今はもう家庭環境は安定しつつあるようですが、だからと言って、ほかのお子さんと同じように教育する方向性は、Bさんにとって負荷が大きいように思うのです。
傷の癒え方は人それぞれ
不安定になるお子さんは、本人の生まれ持った特性やそれまでの家庭環境、養育環境、教育環境などにおいて、大なり小なりの傷つき体験を持っていることなどいろいろが影響しあい、そのような表れになるといわれています。
そして、不適切な養育環境の中に継続しておかれていると、脳が変形してしまうと科学的に証明されています。(注1)
変形したは脳は元の戻ることはなく、変形した部分を他で補い全体としてうまく機能するようになるようなのです。
その過程を想像したとき、環境が良くなった次の日からうまく機能するようになる、とは考えにくいと思います。
継続的な配慮を望む
傷つき体験があるお子さんは、心の傷や脳の変形があるのかも、と思いを馳せてもらえたらと思います。
そして、目に見える怪我や病気をしている子どもと同じように、ケアの視点を持ったかかわりを望みます。
心の傷があること、脳が変形しているであろうことは、見えないので理解されづらく、さらなる傷つき体験となり、ますます事態をこじらせることになりかねないと危惧します。
傷つき体験のあるお子さんの情報は、確実に引き継ぎと共通理解をし、配慮のあるかかわりを継続してほしいと福祉的立場から思います。
(注1)
福井大学 子どものこころ発達研究センター 教授 友田明美氏の著書などより