スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

受け取れない贈り物

 

 

「物品を受け取ってはならない」を学んだ

クライエントからの贈り物をスクールソーシャルワーカー(以下SSW)の私は受け取ることができません。

それは、社会福祉士として守らなければならない「倫理綱領」に、

社会福祉士は、クライエントから専門職としての支援の代償として、正規の報酬以外に物品や金銭を受けとってはならない。」

と書いてあるからなのです。

「倫理綱領」と「行動規範」について、社会福祉士の受験資格を得るための専門学校に在籍中、スクーリングの授業で学びました。

今まで教育者として当たり前にお礼をいただいてきた私にとって、かなりの驚きであったことを今でも鮮明に覚えています。

その時の講師は、ご自分の体験談を話してくださいました。

社会福祉士は基本的に生活弱者の支援をします。金銭的にお困りのこともよくあることです。

そんなクライエントさんが、お饅頭を1個渡してくれようとしたそうなのです。

お礼の気持ちは受け取りたい、でも、金品は受け取れない、かなり葛藤したとのことでした。

Aさんからの贈り物

支援してきたAさんからの贈り物を、私はいったんは受け取ってしまいました。

出かけるのが苦手、選ぶのも苦手なAさんが、私のために行動できたことが涙が出るほどうれしくて、思わず受け取ってしまったのでした。

受け取ってすぐ倫理綱領を思い出し、「受け取れないんです。」と返したのでした。

そして、「先生たちはもらっているのになんでヒロさんはだめなの?」と質問してくれたので、社会福祉士のきまりだということを伝えさせていただきました。

返したことはクライエントの利益につながるの?

行動規範には、「遂行に際して、クライエントの意思を尊重し、その利益の最優先を基本」とも書かれています。

選んだ品物を渡したい、というAさんの意思を尊重するならば、受け取る方が利益になるのではないか、とも思うのです。

私が受け取らないことにより、Aさんにとってやったけどうまくいかなかった経験となり、気持ちが沈んでしまうのではないか、と心配です。

受け取れば、Aさんにとって成功体験の一つとなると思うのです。

もちろん、贈り物を買いに行く、選ぶ、と言った行動を起こすことができたことだけで十分成功体験、という考え方もあると思います。

しかし、受け取ることにより、Aさんの気持ちはさらに充実し、さらに質の高い成功体験となると思うのです。

今回の場合、本当にAさんの利益になったの?と強い心残りがあります。