スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

家に帰りたい子どもに給食を見せる

帰りたいAさん

Aさんはときどき家に帰りたくなり教室を出て行ってしまいます。

今までは廊下をうろうろするぐらいでしたが、

その日は外履きに履き替えて玄関まで来てしまいました。

そして、急に叫び始めたのでした。

始めは泣いているように見えたのですが、

よく見ると無表情で、どうも泣いてはいないよう。

その様子を見て、教頭先生は、

「Aさんはなんで叫んでいるの?」

と静かにきいてくださいました。Aさんは、

「お母さんに聞こえるかと思って。」

と答えました。教頭先生は、

「残念ながらお母さんには聞こえないと思うよ。」

と教えてあげました。

Aさんは自分の声が届かないことはうすうす感じていたのかもしれません。

叫ぶのをぴたっとやめました。

そしてそれからは玄関と靴箱を行ったり来たり。

靴箱から玄関に向かうとき、

「やっぱり帰りたいんだよな~。」

と小声でつぶやき、

玄関から遠くを見つめてしばらくたたずみ、

教頭先生に促されて靴箱に戻る、を何度も繰り返していました。

変化を促す

変化を促すため、

「お腹すいてない?」

とAさんにきいてみました。

「すいた~。」

とAさん。

それを聞いた担任の先生が給食の献立を伝えましたがAさんに変化なし。

そこで、給食を見せることを提案し、

支援員さんに給食をもってきてもらいました。

給食を見たAさんに変化が見られました。

玄関から遠くを見つめることをやめ、給食を見つめています。

このチャンスを逃さず、Aさんとこの給食をどこで食べるかを相談し、

特別に校長室で先生たちと一緒に食べることになりました。

すると、なんとか靴を履き替え校長室へと歩みを進め、

無事気持ちを切り替えることができました。

「強み」を見つけ支援に生かす

スクールソーシャルワーカー(以下SSW)は強みを見つけて変化を促します。

今回は、

「お腹がすいている」ことから「食べたい」

「遠くを見つめている」ことから「視覚情報が入りやすそう」

という強みがあることに着眼し、

「給食を見せること」で「学校にいられる状況をつくること」

を目指しました。

私たちSSWと教員の対応の違いは、

根拠を持ってその支援をしているのか、も一つです。

今回見えていることとしては、

「給食を見せたら食べる気になって帰宅したいと言わなくなった。」

になります。

そしてそれは、SSWが根拠を持った支援を行ったことで得られた結果です。

強みを支援に生かすことや、支援の根拠を明確にして支援する視点が

学校にも根付くよう伝えていきたいと思っています。