スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

虐待家庭の子ども

ネグレクトのAさん

私はいろいろな保護者さんを知ることができる立場にいます。

保護者さん本人が伝えてくださる場合もありますし、先生から伺う場合もあります。

子どもは生まれる家庭を選ぶことができません。

保護者がお子さんを継続して辛い目に合わせている場合、場合によっては一時保護してもらえるよう管理職に伝えることもあります。

ただ、そこまでのケースを学校で見つけることは簡単ではありません。

子ども達は、生まれた家庭がその子にとっての「普通の家庭」です。

過度に家事や兄弟の世話をさせられていている「ヤングケアラー」や、自分自身の世話を保護者がしていない「ネグレクト」だとしても、その子にとってはそれが「普通」なのです。

もちろん、小学校低学年でも「普通じゃない」ことに気づくお子さんもいます。

Aさんは自分の親が他の家庭に比べいろいろできていなことに気づいていたようでした。

私はAさんの家に行ったことがあったのですが、飲み残しが靴箱に置かれたままなど荒れた玄関先、干されずにかごに入ったままの洗濯物などを私が見てしまったこと、Aさんに口止めされたのでした。

しかし、Aさん自身に「ネグレクト」状態と言う認識はないように見えました。

何気ない会話の中で

Bさんは教室にいることが難しいお子さんでした。

その日も、休み時間が終わったのに教室に入らないBさんをクラスメートが一生懸命説得している場面に遭遇しました。

私は説得している子に

「ヒロさんがBさんと一緒にいるようにするよ。なので、教室に戻って担任の先生にそう伝えてくれる?」

というと、その子は「わかった!」と教室へ戻っていきました。

Bさんと私はまだ関係性ができていないので、しばらくはただただ見守っていました。

そして、「教室嫌なの?なんかあったの?」とBさんを心配してるよ、のメッセージが伝わるように質問してみました。

すると、短い言葉で返事をしてくれました。

その後、質問攻めにはせず、また見守っていました。

すると、Bさんの方から「見て見てー!」と話しかけてくれたのでした。

日が照って暑い日でしたので、「暑いから教室入ろうよ、教室涼しいよ。」と時々声をかけていたのですが、聞き入れてもらえないまま時は過ぎていきました。

そろそろこの時間の授業時間が終わってしまうというころ、Bさんから突然家族の話が出ました。

それは、兄弟からも両親からも暴力をふるわれているという内容でした。

Bさんは私に何とかしてほしくてその話をしたというより、家で起きている嫌なことの愚痴を吐いただけのようでした。

子どもの言葉の重さ

スクールソーシャルワーカー(以下SSW)は、スクールカウンセラーと違い子どもがどんな環境に置かれているのかの事実を知ろうとします。

そしてそれは、面談と言う形でなく、この時のように何気ない会話の中でチャンスを得ることもあります。

そして、知ったことはすぐに管理職に伝えます。

本来、虐待は疑わしい段階で児童相談所に通告するものですが、学校としてはそれが最善ではないと判断することがあります。

福祉職の私の立場としてはもどかしさもありますが、学校の立場も理解しています。

ただ、通告しないにしても、必ず個別の支援は必要だと考えます。

できれば、できるだけ早くケース会議を開き、どんな支援ができるのかを考えてほしいのですが、やってくれる学校とそうでない学校があります。

Cさんから家庭内の暴力を聞いたときもすぐに管理職に伝えましたが、何の対応もしてもらえませんでした。

Cさんはよく嘘をつく子だから、と言う担任の見立てが優先されたからでした。

このとき、私は怒りで震えていました。指導主事にも伝えました。ただ、学校と言う組織は、最終判断は校長です。指導主事から何か言えるということはないようでした。

そして、校長の要望でSSWとしての所見所感は、書面にして管理職に渡しました。

ただ、数年で入れ替わる管理職ですので、その管理職が異動してしまったころ、Cさんに問題行動が出るかもしれない、と危惧しています。

そんなころにはその時私の書面はなくなっているのかもしれない、と思っています。

心配な家庭のお子さんの記録も、特別支援のように管理してもらえるようになると良いと考えています。