スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

校内巡視で『予防的に関わる』

私の仕事の一つに「校内巡視」があります。

文字通り、学校内をきょろきょろ見回しながら歩いているわけです。

授業中、休み時間、下校時など、一つ一つ視点を持って観ています。

 

ある日の昼休み、悲しげな表情で涙をためたAさんとばちっと目が合いました。

「何か困った事ある?」と尋ねると、首を横に振ります。

困ったことはないようだけどこの表情は絶対何かある、

今、それを突き止めて解消の手立てを考えたい、

そう思った私は、言葉を変えて質問を繰り返しました。

そしてわかったのは、

・朝、母親と離れるのが嫌であること。

・昼頃になると、母親が仕事から帰宅していると思うと、早く会いたくて悲しくなるということ。

・上記の思いを母親には伝えていないこと。

そして私はAさんにこのような提案をしました。

・母親への気持ちを伝えること。

・朝に言うと母親は困ると思うので、今日帰宅したらすぐ伝えること。

・伝えたらどうなったかを担任か養護教諭に伝えること。

伝えたらどうなったかを私が聞かなかったのは、

私の勤務が週に1回なので聞くのが1週間後になってしまうからです。

 

そして、1週間後、私はAさんのことが心配で休み時間に様子を見に行きました。

また、ばちっと目が合いました。

1週間前との違いは表情。

目に力があり、悲しげな様子は見られません。

「あれからどう?」と尋ねると、こくっとうなずきました。

「うなずいたってことは、大丈夫なんだね。」と言うと、

「はい。」とはっきりわかる声の大きさで答えてくれました。

「また困ったことがあったらいつでも声かけてね。」

と言い残しその場をあとにしました。

 

Aさんについて、校内巡視で会う前に先生方からの情報提供はありませんでした。

担任と養護教諭に尋ねたところ、数日前からこのような状態だったこと、

昨年も長期休暇の後似たような状態になっていたことがわかりました。

もし、私が校内巡視でこの子を見つけなかったならば、

この子の苦痛は続き、問題をこじらせていたかもしれません。

これぐらい放っておいても大丈夫、と周囲が思うことが、

本人にしてみればとてもつらい場合もあります。

そして、事態を悪化させてしまう場合もあります。

ことが大きくなる前に『予防的に関わる』ことは、

スクールソーシャルワーカーの大切な仕事の一つだと思っています。