スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

『自殺しちゃだめだよ』

「自殺しちゃだめだよ」

自殺願望のあるAさんにSC(注1)がかけた言葉です。

 

AさんはSCにいろんな話ができていました。

しかし、最近AさんはSCとの面談中に本をぺらぺらめくるなどし、

あまり話さなくなったそうです。

そして、とうとうSCとの面談をキャンセルするようになりました。

学校はその理由がわからないでいました。

 

ある日、私がAさんと話していると、

「自殺しちゃだめだよってSCに言われた~」

と話してくれました。

私はピンときました。

だからAさんはSCと話さなくなったんだ、と。

 

自殺願望のある人に「自殺しちゃダメ」は、

対人支援の専門職としては基本的に禁句です。

基本的に、としたのは、切るに切れないほどの太い信頼関係ができており、

なおかつ、クライエントさんがその言葉を受け入れてくれそうである

タイミングだと見極められているときは聞き入れてもらえるからです。

しかし、そういった状況の見極めは極めて困難ですから基本的には口にしないのです。

SCさんはきっと大丈夫という確信があったのかもしれませんが、

結果として、Aさんが話すことができる大人が一人減ってしまったことは事実でした。

 

そして、私は何と答えたか、

「自殺しちゃダメとは言わないけど~・・・

まあ、そのぐらいの気持ちってことなんだね~」

とちょっと軽い感じで答えておきました。

 

最近心理学系の講座を受けたとき、臨床心理士であり僧侶である講師が、

「人は、気持ちは死にたい、となるけれど、身体は死にたいにはならない、

心臓は今まで通り動き続ける、その他の内臓もそう、

だから、死にたい人はそのギャップが辛いのだ」

といった内容のことをおっしゃっていました。

以前、自殺ゲートキーパー養成講座を受けたときの講師は、

「死にたい、は、生きたい、の裏返し」

とおしゃっていましたが、この根拠が前者だ、と結びつき、

私の心に深く入っていきました。

「死にたい」というその人の、

「本当は生きたい」が強く信じられるようになりました。

そして、さらに安心して「死にたい」を聴けるようになりました。

 

Aさんの「死にたい」を聴き続けることで、

Aさんが「生き続ける」ことを支えていきたい思いでいます。

 

注1 SCはスクールカウンセラーです。