スクールソーシャルワーカーのひとりごと

守秘義務に配慮して綴っています

「愛情がない⇒虐待」ばかりではない

 

 

虐待者の一番は実母

子どもに虐待をする親は、子どもに対して愛情がない、という思い込みを持つ方もいらっしゃると思います。

虐待とは無関係に生きてきた方々には、どんな人が虐待するのか想像することが難しいのかもしれません。

すると、報道される虐待が虐待のイメージになってしまうのかもしれません。

例えば、虐待者で1番多いのは実の母親で統計上は約半数でが、継母や継父が一番多いのでは?と思ってしまう方が少なくないかもしれません。継母や継父は合わせても1割にも満たないのです。

私は虐待の環境にあるご家庭のお子さんや保護者さんの話を聴くことがあります。

そこで思うのは、「愛があるからこその虐待」の方が多いのではないか、ということです。

愛情表現の歪み

Aさんのお母さんは、Aさんに包丁を向けたことがあります。Aさんはお母さんともめて裸足で家を飛び出したこともあります。
Aさんのお母さんはAさんを殺そうと思って包丁を出したわけでもなく、Aさんを苦しめたくて追い回すわけでもないのです。

Aさんによりよく育ってもらいたいが思い通りにならないAさんに感情的になってしまっているのです。

愛情があるが上、そして、うまくいかなさが、このような行動に結びついてしまっていると思われます。

Bさんのお母さんは、Bさんが幼児の頃からできていないことを朝から晩まで一つ一つ指導していました。その時、大声で怒鳴ったり、手をあげてしまったこともあったようです。

私と出会った時にはもうそれはないとのことでしたが、「あれは愛の鞭でした。Bもそう思ってくれていると思います。」とおっしゃっていたことが今も耳から離れません。

可愛さ余って憎さ百倍

虐待をしてしまうお母さんは、お母さんなりの愛情はあると思うのです。

けれど、その表し方が上手くない、お子さんにとって有害となってしまう形で表されてしまい、虐待となってしまっていると思っています。

とある講演で虐待者として語ったお母さんの第一声が「虐待しようと思って生んだわけではありません。」でした。

虐待をしてしまっているお母さんも苦しいことが伝わってきました。

苦しいお母さんの話を誰かが聴くことでお母さんは癒され行動修正につながると思うのです。

実際、Aさんのお母さんは定期的に面談をし、包丁を出すことや追いかけることもなくなったようです。

寄り添う人が居ることで人は心の余裕ができ、それが行動変容に繋がると思っています。

そして、世の中の人々が一人でも多く寄り添い上手になってくれたら、より多くの方々が生きやすくなるように思っています。